友人の目が真っ赤だった
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友人の目が真っ赤だった
友の首にさがっているのは相も変わらずフィルムカメラ。
これでパシャリパシャリと撮る一方、スマートフォンでもパリチパチリ。
どうしようどうしようどうしよう。
わたしは何週間も前からあせりにあせっていた。
日曜日の夕方にニースに到着するふたりと一緒に晩ごはんを食べる。
六人の晩ごはんが八人になるだけの話で、抗衰老 どうってことないはずなのに、なんだかどうってことある気になる。
気ばかりがあせってしまい結局は何を食べていいかもわからずサラダを大量に作った。
ほくほくに茹であがるはずのじゃがいもは茹ですぎてべちゃべちゃだった。
どれを食べてもいまいちで何を食べたのかよくわからなくて何やってるのだよおまえさんは、と自分につっこみ。
翌日に一緒に台所に立って作った、驗窗残りものを使った料理のほうがよっぽどおいしかった。
友人の連れがなんたってホンモノの料理人なんだもの。
包丁をお皿のお尻を使ってさらりと研いでしまうあたりなかなかのお人なのだった。
わたしはからまわりする自分を自覚しつつ、まあ、好きな相手にはこうなっちゃうんだよなあと妙に納得する自分もいた 組合屋。
出発の前日、友人の目が真っ赤だった。
なんだよお。なんで泣くんだよお。
最初気がつかないふりをして、やっぱり気になった。
あ!もしかしたらガンの宣告を受けたの?
余命三ヶ月って言われたから、思いきってニースに来てくれたの?
一瞬でそんなことが頭をよぎった。
「いや、わたしは長生きだと思うよ」
なんだよお。じゃあ、なんで泣くんだよお。
泣いたところなんて、見たことない。
泣き虫なのはわたしのほうなのに。
「どうもありがとう。なんか、ごめんね」
別れ際、友人が言った。
いつもはごめんね、ってなかなか言わないくせに。
なんで言わなくていいごめん、は言うのかなあ。
「また来年来る。フランス語、ぺらぺらになっとく」
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