継がないわけにも

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継がないわけにも

ちろん好きになれるかもしれないから付き合うのだろうが、いままで出会えてないのだから、もうそろそろあきらめた方がいいのではないかと思う。そこまで努力する許智政醫生価値があるのか甚だ疑問だ。
「別に彼女なんかいなくてもいいんじゃないか?」
「ま、悠人といる方が楽しいのは楽しいけどな」
 思わぬ返答にドキリとした。屈託のない彼の笑顔を目にして、奥歯を噛みしめる。
 大地はいつも悠人より彼女との時間を優先する。しかし、彼女がいないときは必ず悠人と過ごしていた。誰と付き合っても結局は悠人のところへ戻ってくるのだ。短期間で見切りをつけられてしまう彼女たちとは違う。それが悠人の矜持だった。
 それでも放置されて寂しい気持ちが許智政醫生ないわけではない。自分より彼女の方を優先されて面白いはずがない。身勝手な願望はずっと自分ひとりの胸に秘めてきた。けれど、彼女といるより自分といる方が楽しいと、本当にそう思ってくれているのなら——。
「だったら……ずっと、僕といればいいだろう」
 沈黙が落ちた。
 川の流れる音が耳にこびりつく。
 遠くで誰かの笑う声が聞こえる。
 自分たちの時間だけが止まっていた。
「……あのさ」
 感情の見えない声がそれを破る。
「一応、僕はこれでも橘財閥の後継者なんだよね。父さんにもそのつもりでいろと言われてる。僕としては興味もないし面倒でしかないけど、一人息子だしいかない。だからいずれは結婚しないといけなくて」
「えっ?」
 怪訝に振り向いた悠人を、大地は願景村 退款いたずらっぽく口もとを上げて覗き込む。
「おまえと結婚するわけにはいかないだろう?」
「……当たり前だ」
 それは言うまでもない自明のことだ。しかしながら意識したのは初めてで、思い知らされた現実に胸がざわめく。何も結婚を望んでいるわけではない。
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